0. この記事でやること
体とは、ザックリ言って加減乗除ができる集合のことである。体の中でも、素体という特別な体があり、この体の自己準同型は恒等写像しかないことが分かる。このような体を自己準同型が自明な体と呼ぶことにしよう。すると、逆に自己準同型が自明な体は素体以外にどのようなものがあるのか?という疑問が浮かぶ。この記事では、基本的な体論の知識を用いて、自己準同型が自明な代数拡大体の特徴づけを行う。例によって、参照した教科書は雪江代数2巻である。教科書に載っている命題や証明を適宜省略したところは、脚注に教科書の命題番号を載せておく。
1. 素体の自己準同型
注意1.1 $A$, $B$ が環として同型なら、この二つを区別しないことにする。つまり、$B$ が集合として $A$ と異なっていたとしても、環として同型なら $A$ と同じものとみなす。環の単射準同型 $\phi: A \to B$ が存在するとき、$\phi$ は $A$ と $B$ の部分環 $\text{Im}(\phi)$ の同型を定めるが、このような状況では、$A$ と $\text{Im}(\phi)$ を同一視して、$A \subset B$ とみなす。
命題 1.2 ($\mathbb{Z}$ の環準同型) *1
$A$ を
可換環とする。
(1) $\mathbb{Z}$ から $A$ への環準同型が一意的に存在する。
(2) $\phi\colon \mathbb{Z} \to \mathbb{Z}$ が環準同型なら、$\phi = \text{id}_{\mathbb{Z}}$
(証明)
(1). $n > 0$ に対し、$\phi(n) = \overbrace{1_A + 1_A + \ldots +1_ A}^{n\text{回}}$ ($1_A$ を$n$ 回足した $A$ の元) と定める。$n < 0$ に対しては、$\phi(n) = -\phi(-n)$ とし、$\phi(0) = 0_A$ と定める。 $\phi$ は環準同型である。$\psi$ が環準同型なら、$\psi(1) = 1_A$ で $n \in \mathbb{Z}$ が $1$ を $n$ 回足したものであることに注意すれば、$\phi = \psi$ が分かる。
(2). (1)より、$\phi\colon \mathbb{Z} \to \mathbb{Z}$ が準同型なら、任意の $n \in \mathbb{Z}$ に対し、$\phi(n) = n$ であるから、$\phi = \text{id}_{\mathbb{Z}}$ である。■
$K$ を体とすれば、$\mathbb{Q} \subset K$ か $\mathbb{Z}/p\mathbb{Z} \subset K$ である。
(証明)
$\phi: \mathbb{Z} \to K$ を命題1.2(1)の準同型とする。
準同型定理により、$\mathbb{Z}/\text{Ker}(\phi)$ は $K$ の部分環と同型である。体は整域であり、$\mathbb{Z}$ はPIDなので、ある素元 $p$ が存在して、$\text{Ker}(\phi) = (p)$ となる。よって $p$ は
素数か $0$ である。$p$ が
素数なら、注意2.1より$\mathbb{Z}/p\mathbb{Z} \subset K$ である。$p$ が $0$ なら、同様に $\mathbb{Z} \subset K$ である。$a, b \in \mathbb{Z}$ $(b \neq 0)$ とすれば、$K$ は体なので、$ab^{-1} \in K$ である。$\mathbb{Q}$ の任意の元は $ab^{-1}$ で表されるので$\mathbb{Q} \subset K$ とみなせる。 ■
定義1.3 $\mathbb{Q}$ と $\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ を
素体という。命題1.3より、任意の体 $K$ は素体を含む。$\mathbb{Q} \subset K$ なら $K$ を
標数 $0$ の体、$\mathbb{Z}/p\mathbb{Z} \subset K$ なら
$K$ を
標数 $p$ の体という。
$K$ を素体、 $f \colon K \to K$ を環準同型とする。$f= \text{id}_{K}$ である。
(証明)
(i) $K = \mathbb{Q}$ の場合: $f$ の定義域を $\mathbb{Z}$ に制限した環準同型 $f|_\mathbb{Z}$ は、命題1.2(2)より $\mathbb{Z}$ の恒等
写像である。$\mathbb{Q}$ の任意の元は $a, b \in \mathbb{Z} (b \neq 0)$ により $ab^{-1}$ で表されるので、 $ f(ab^{-1}) = f(a)f(b)^{-1} = f|_\mathbb{Z}(a)f|_\mathbb{Z}(b)^{-1} = \text{id}_{\mathbb{Z}}(a)\text{id}_{\mathbb{Z}}(b)^{-1} = ab^{-1} $ より、$ f = \text{id}_{\mathbb{Q}}$ である。
(ii) $K =\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ の場合: $\phi\colon \mathbb{Z}\to\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ を命題1.2(1)の環準同型とする。$\phi$ は
全射なので、$\pi \colon \mathbb{Z} \to \mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ を自然な準同型とすれば、
準同型定理より環同型 $\psi\colon\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ が存在して、$\psi\circ \pi = \phi$ となる。命題1.2(1)の一意性より、$f\circ\phi = \phi$ となる。再び
準同型定理から $ \psi\circ\pi = f\circ\phi$ となる。従って、$ \psi\circ\pi = f\circ\psi\circ \pi$ となるが、$\pi$ が
全射なので、$ \psi = f\circ\psi $ となる。$\psi$ は同型なので、$\psi^{-1}$ を合成すれば、$f =\text{id}_{\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}}$ を得る。■
このように、素体の自己準同型は恒等
写像しか存在しないことが分かる。
定義1.5 $A_1, A_2$ を環、$A \subset A_1, A_2$ を部分環とする。$\phi \colon A_1 \to A_2$ を環準同型(同型)とする。任意の $x \in A$ に対し、 $\phi(x) = x$ が成り立つなら、$\phi$ を $A$ 準同型(同型)という。$\text{Hom}^{al}_A(A_1, A_2) := \{\phi\colon A_1 \to A_2 \mid \phi$ は$A$ 準同型 $\}$, $\text{Hom}(A_1, A_2) := \{\phi\colon A_1 \to A_2 \mid \phi$ は準同型 $\}$ と書く。
上の言葉を使えば、自己準同型が自明な体 $L$ とは、$\text{Hom}(L, L) = \{\text{id}_L\}$ であるということである。 $L$ が体なら、命題1.3より $L$ は素体 $K$ を含む。命題1.4より素体の自己準同型は自明なので、$L$ の自己準同型を $K$ に制限すれば、それは恒等
写像になる。従って、$\text{Hom}(L, L) = \text{Hom}^{al}_K(L, L)$ であり、$L$ の$K$ 自己準同型を調べることは、$L$ の自己準同型を調べることと同じになる。
2. Normalityと自己準同型
以下 $L/K$ を体の拡大とする。
ガロア理論を学ぶと、正規拡大という概念が重要になる。この概念は体の $K$ 自己同型全体の集合をコントロールする役割を持っているが、この概念を少し改変したものを用いる。ここでの用語は、この記事のためのもので、一般的ではない。
定義2.1 $L/K$ を代数拡大、$\bar{K}$ を $K$ の代数閉包とする。$\alpha \in L$, $\alpha$ の $K$ 上の最小多項式を $f(x)$ とする。 $\text{Nom}_\alpha \subset L$ を、$\text{Nom}^{K}_\alpha := \{\beta \in L \cap \bar{K} \mid f(\beta) = 0 \}$ と定義する。$|\text{Nom}^{K}_\alpha|$ を $\alpha$ の $K$ 上の Normarlityという。 $|\text{Nom}^{K}_\alpha| = \text{deg}f(x)$ なら $\alpha$ の $K$ 上の Normarlityは最大である、といい、$|\text{Nom}^{K}_\alpha| = 1$ なら、$\alpha$ の $K$ 上の Normarlityは最小である、という。
定義2.2 $L/K$ を代数拡大とする。 任意の $\alpha \in L$ の $K$ 上のNormarlityが最大なら、$L$ の$K$ 上の Normalityは最大である、という。任意の $\alpha \in L$ のNomarlityが最小なら、$L$ の$K$ 上の Normalityは最小である、という。
定義より、$L/K$ が正規拡大であるということは、$L$ の $K$ 上のNormalityが最大であるということである。$K$ が明らかな場合には、単に $L$ のNormalityが最大(最小)であるという。
$L/K$ を体の代数拡大、$F/K$ を 体の拡大、$\alpha \in L$ とし、$\phi \colon L \to F$ を $K$ 準同型とする。$\phi(\alpha)$ は $\alpha$ の$K$ 上の共役である。
(証明)
$\phi$ のよって誘導される $K$ 準同型 $L[x] \to F[x]$ も $\phi$ とかく。$f(x) \in K[x]$ を $\alpha$ の最小
多項式とすれば、$f(\phi(\alpha)) = \phi(f(\alpha)) = \phi(0) = 0$ なので、$\phi(\alpha)$ は $\alpha$ の共役である。■
以下、与えられた $K$ 準同型を自己準同型に拡張できるということを示す。ここで使われている方法は、与えられた
代数閉体への$K$ 準同型を拡張するときの方法
*5*6と同じである。
命題 2.4 (準同型の拡張)
$L \supset M \supset K$ を代数拡大、$ F/M $ を体の拡大とする。$K$ 準同型 $ \phi \colon M \to F $ が与えられているとき、$\alpha \in L$ の $F$ における $ M $ 上の共役 $\beta$ が存在すれば、$K$ 準同型 $\phi' \colon M(\alpha) \to F$ が $\phi$ の拡張で、$\phi'(\alpha) = \beta$ となっているものが一意的に存在する。
(証明)
$\phi$ のよって誘導される $K$ 同型 $M[x] \to \phi(M)[x]$ も $\phi$ とかく。$\alpha$ の$ M $ 上の最小
多項式を $f(x)$ とし、$g(x) = \phi(f(x))$ とする。$\phi$ が同型なので、$g(x)$ は $\phi(M)$ 上既約な
多項式である。よって、$g(x)$ は $\beta$ の $\phi(M)$ 上の最小
多項式である。$f(x)$ は $\alpha$ の最小
多項式だから、 $ M $ 同型 $M(\alpha) \cong M[x]/ ( (f(x) )$ が存在する。同様に、$\phi(M) $ 同型 $\phi( M )[x]/ ( (g(x) ) \cong \phi(M)(\beta)$ がある。
準同型定理により、$\phi$ は $K$ 準同型 $M[x] /( f(x) ) \to \phi(M) [x] /( g(x) )$ を誘導する。それぞれを合成することで、$K$ 準同型 $M(\alpha) \to F$ で上の条件を満たすものが得られる。$\psi \colon M(\alpha) \to F$ が上の条件を満たせば、$\psi|_{M} = \phi'|_{M} = \phi$ で $\psi(\alpha) = \phi'(\alpha)$ なので、$\psi = \phi'$ である。 ■
命題 2.5 (自己準同型への拡張)
$L \supset M \supset K$ を代数拡大とする。$K$ 準同型 $ \phi \colon M \to L $ が与えられているとき、$K$ 準同型 $\phi' \colon L \to L$ で $\phi$ の拡張になっているものがある。
(証明)
$\mathbb{X} := \{(\phi_{F}, F) \mid L \supset F \supset M $ は拡大体で、$\phi_{F} \colon F \to L$ の $ M $ への制限は $\phi$ $\}$ と定義する。$(M, \phi) \in \mathbb{X}$ なので、$\mathbb{X} \neq \emptyset$ である。 $\mathbb{X}$ 上の半順序を、$(\phi_{F_1}, F_1), (\phi_{F_2}, F_2) \in \mathbb{X}$ に対し、
$(\phi_{F_1}, F_1) \leq _{\mathbb{X}}(\phi_{F_2}, F_2) := F_1 \subset F_2, \phi_{F_2}$ の $F_1$ への制限は $\phi_{F_1}$ と定義する。これにより、$\mathbb{X}$ は
帰納的順序集合になる。
Zornの
補題によって、$\mathbb{X}$ の極大元 $(F_{\text{max}}, \phi_{F_{\text{max}}})$ が存在する。$L \neq F_{\text{max}}$ と仮定して、$\alpha \in L \setminus F_{\text{max}}$ をとる。$\alpha$ 自身は $\alpha$ の $F_ {\text{max}}$ 上の共役なので、命題2.4により、$K$ 準同型 $F_{\text{max}}(\alpha) \to L$ で、$\phi_{F_{\text{max}}}$ の拡張になっているものが存在するが、これは $(F_{\text{max}}, \phi_{F_{\text{max}}})$ の極大性に矛盾する。 ■
ゆえに、次の系が得られる。
系 2.6 (自己準同型が自明な代数拡大体)
$L/K$ を代数拡大とする。
(1) $L$ の $K$ 上のNormalityが最小である $\iff \text{Hom}^{al}_K(L, L) = \{\text{id}_L\}$
(2) $S \subset L$ とし、任意の $\alpha \in S$ の $K$ 上のNormalityが最小ならば、$K(S)$ の $K$ 上のNormalityは最小である。
(証明)
(1): ($\Rightarrow$) 対偶を示す。$\text{Hom}^{al}_K(L, L) \neq \{\text{id}_L\}$ なら、$L$ の $K$ 自己準同型で、恒等
写像でないものがある。よって、$\alpha \in L$ で、$\phi(\alpha) \neq \alpha$ となるものがある。命題2.3より、$\phi(\alpha)$ は $\alpha$ の $K$ 上の共役なので、$\alpha$ のNormalityは最小でない。
($\Leftarrow$) 対偶を示す。$\alpha \in L$ の $K$ 上の共役 $\beta \neq \alpha$ で $\beta \in L$ となっているものがある。命題2.4より、$K$ 準同型 $K(\alpha) \to L$ で恒等的でないものがあるが、命題2.5によってこれを $L$ の $K$ 自己準同型に拡張することができる。よって、$\text{Hom}^{al}_K(L, L) \neq \{\text{id}_L\}$ である。
(2): $\phi \in \text{Hom}^{al}_K(K(S), K(S))$ とする。命題2.3より任意の $s \in S$ に対し、$\phi(s)$ は$s$ の $K$ 上の共役である。$s$ のNormalityは最小なので、$\phi(s) = s$ である。すなわち、$\phi = \text{id}_{K(S)}$ であり、(1)より、主張が従う。■
従って、特に $K$ が素体なら $L$ の$K$ 上のNormalityが最小であることと、$\text{Hom}(L, L) = \{\text{id}_L\}$ であることは同値である。
例2.7 標数 $p$ の代数拡大では、任意の有限次拡大は正規拡大である。
*7 従って、$\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ 上Nomarlityが最小な有限次拡大体は $\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ しかない。一般に $ L/M/K $ が代数拡大で、$L$ の $K$ 上のNormalityが最小なら、$ M $ の $K$ 上のNormalityも最小になる。従って $L/\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ が 無限次拡大であっても、$L$ は Normalityが最小でない中間体を含むので、$L$ のNormalityは最小ではない。よって、
標数 $p$ の代数拡大体で、自己準同型が自明な体は $\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ しかない。
例2.8 標数 $0$ の場合、$\mathbb{Q}(\sqrt[3]{2})/\mathbb{Q}$ は正規拡大でない拡大の例
*8として有名だが、この拡大体は $\mathbb{Q}$ 上 Normarlityが最小な体でもある。この例を少し一般化してみよう。まず、1の原始 $n$ 乗根について簡単に述べる。
命題 2.9
$n > 0$ を正整数、$p > 0$ を
素数とし、
$\xi_{n} = \cos(2\pi/n) + \sqrt{-1}\sin(2\pi/n)$ とおく。
(1) $\xi_{n}^{n} = 1$ である。
(2) $ m $ が正整数なら、$(\xi^{m}_{p^n})^{k} = \xi_p$ となる 正整数 $k$ が存在する。
(3) $f(x) = x^p - 1 / x - 1$ は 既約
多項式で、$\xi_p$ の最小
多項式である。
(証明)
(1) : de Moivreの定理から従う。
(2): de Moivreの定理より、$(\xi^{m}_{p^n})^{p^{n-1}} = \xi^{m}_p$ である。必要なら $p$ で約分することで、$ m $ と $p$ が互いに素であるようにできる。Fermatの小定理より $m^{p-1} = 1$ $(\text{mod}$ $p)$ であるから、$(\xi^m_p)^{m^{p-2}} = \xi_p$ になる。
(3): Eisensteinの既約判定法から従う。
*9 *10 ■
上の $\xi_{n}$ を1の原始 $n$ 乗根と呼ぶ。
命題 2.10
$p > 0$ を奇
素数、$n > 0$ を 正整数、$q$ を任意の
素数とする。$f(x) = x^{p^{n}} - q$ の根を一つとり、それを$\sqrt[p^{n}]{q}$ とかく。$\mathbb{Q}(\sqrt[p^{n}]{q})$ は $\mathbb{Q}$ 上Normalityが最小である。
(証明)
Eisensteinの既約判定法により、$f(x)$ は $\mathbb{Q}$ 上既約な
多項式である。$\xi_{p^{n}}$ を1の原始 $p^{n}$ 乗根とすれば、$f(x)$ の根は、$\sqrt[p^{n}]{q}$ $\xi^{m}_{p^{n}}$ $(m = 0, 1, \cdots ,p^{n}-1)$ とかける。 $m \neq 0$ で $\sqrt[p^n]{q}$ $\xi^{m}_{p^{n}} \in \mathbb{Q}(\sqrt[p^{n}]{q})$ なら、命題2.9(2) より、$\mathbb{Q}(\xi_p) \subset \mathbb{Q}(\xi^{m}_{p^{n}}) \subset \mathbb{Q}(\sqrt[p^{n}]{q})$ である。命題2.9(3)より、$[\mathbb{Q}(\xi_{p}): \mathbb{Q}]= p-1$ であるが、$[\mathbb{Q}(\sqrt[p]{q}) :\mathbb{Q}] = p^{n}$ で、$p$ は奇
素数なので、$p-1$ は $p^{n}$ を割らない。従って $\sqrt[p^n]{q}$ $\xi^{m}_{p^{n}} \notin \mathbb{Q}(\sqrt[p^{n}]{q})$ であり、 $\mathbb{Q}(\sqrt[p^{n}]{q})$ のNormalityは最小である。■
よって、任意の奇
素数 $p$ に対して、Normalityが最小な $p^{n}$ 次拡大体が存在する。
素数は無限に存在するので、$\mathbb{Q}$ 上Normalityが最小な代数拡大体は無限に存在する。さらに次が成り立つ。
命題 2.11
$n > 0$ を奇数とする。$\mathbb{Q}$ 上の $n$ 次拡大体で、Normalityが最小のものが存在する。
(証明)
$n$ を
素因数分解して、$n = p_1^{\alpha_1}p_2^{\alpha_2}\ldots p_n^{\alpha_n}$ とする。$n$ が奇数なので、各
素数は奇
素数である。
素数 $q$ を適当にとれば、命題2.9により、$\mathbb{Q}(\sqrt[p_1^{\alpha_1}]{q})$は Nomalityが最小な $p^{\alpha_1}$ 次 拡大体である。$\mathbb{Q}(\sqrt[p_1^{\alpha_1}]{q}, \sqrt[p_2^{\alpha_2}]{q})$ を考えると、$[\mathbb{Q}(\sqrt[p_1^{\alpha_1}]{q}, \sqrt[p_2^{\alpha_2}]{q}): \mathbb{Q}] = p_1^{\alpha_1}p_2^i$ $(0 \leq i \leq \alpha_2)$ となるが、$\mathbb{Q}(\sqrt[p_2^{\alpha_2}]{q}) \subset \mathbb{Q}(\sqrt[p_1^{\alpha_1}]{q}, \sqrt[p_2^{\alpha_2}]{q})$ なので、$p_2^{\alpha_2}$ は $p_1^{\alpha_1}p_2^i$ をわる。$p_1$ と $p_2$ は互いに素なので、$i = \alpha_2$ になる。これを繰り返すことで、系2.6(2) より、$n$ 次拡大体で Normalityが最小なものが構成できる。■
参考