調和級数が発散することの証明

 次の無限級数が発散することはよく知られている。

$$ \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n} = \frac{1}{1} + \frac{1}{2} + \frac{1}{3} + \frac{1}{4} + \cdots  $$

この級数調和級数というが、今回はこの級数が発散することを私なりの方法で証明する。

 

 基本用語を確認しておくと、実数列 $(a_n)$ がある実数 $\alpha$ に収束するとは、任意の $\epsilon > 0$ に対して、ある 自然数 $N$ が存在して、$ n \geqq N$ ならば、$|a_n - \alpha| < \epsilon $ が成り立つ *1 ということだった。任意の実数 $M > 0$ に対し、ある自然数 $N$ が存在して、$n \geqq N$ ならば、$ a_n > M $ が成り立つとき、$(a_n)$ は正の無限大に発散するという *2 。これらを、$\lim_{n \to \infty} a_n = \alpha$,  $\lim_{n \to \infty} a_n = + \infty$ などどかき、$(a_n)$ の極限という。極限は一意的に定まり、四則に関して交換可能である *3 また、$(a_n)$, $(b_n)$ が二つの数列で、ほとんど全ての $ n $ に対し、$ a_n \leqq b_n $ ならば、 $\lim_{n\to \infty} a_n \leqq \lim_{n\to\infty} b_n$が成り立つ。無限級数 $\sum a_n$ の値は、その部分和 $s_n = a_1 + a_2 + \cdots + a_n$ を項に持つ数列 $(s_n)$ の極限として定義され、級数の収束や発散も極限と同様に定義される。

 

 

命題 1
調和級数は発散する。
$$ \sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n} = \frac{1}{1} + \frac{1}{2} + \frac{1}{3} + \frac{1}{4} + \cdots = +\infty$$
 
 (証明)
 無限級数 $ \frac{1}{3} + \frac{1}{4} + \frac{1}{5}  \cdots $ を考える。この級数の部分和を $t_n$ とすると、$$t_n =\frac{1}{3} + \frac{1}{4} + \frac{1}{5} \cdots \frac{1}{n+2} \geqq \frac{n}{n+2} = \frac{1}{1+ \frac{2}{n}}$$ よって、両辺 $n \to \infty$ として、$\lim_{n \to \infty} t_n \geqq 1$ を得る。調和級数の部分和を $s_n$ とすれば、$s_{n +2} = t_n + s_2$ であるから、$\sum_{n=1}^{\infty} \frac{1}{n} = \lim_{n \to \infty} t_n  + s_2 > 2$ である。従って、ある自然数 $K$ が存在して、$ s_K > 2$ となる。数列 $(\frac{1}{n})$ の第 $K + 1$ 項目以降の級数を考えて、同様の議論を繰り返せば、任意の自然数 $n$ に対し、ある $K_n$ が 存在して、$s_{K_n} > n$ となるから、調和級数は発散する。 ■
 
 級数をスライドすることを繰り返して、任意の自然数よりも大きな部分和を見つけるという点が結構面白い証明だと思う。友達に見せたら、級数を括ってる部分が違うだけで、実質的には古典的な証明と同じと言われた。よく考えたら確かにそうなので、そこまで大したことがないように思えてきた。でも、こういう級数は遊んでみると、色々発見があって面白い。

*1:これをほとんど全ての $n$ に対し、$|a_n - \alpha| < \epsilon $ が成り立つなどどいう。

*2:実数のアルキメデス性によって、任意の実数 $ M $ に対して、$ N > M $ であるような自然数 $N$ が存在する。従って、自然数に関して議論すれば十分である。

*3:要するに、$\lim_{n \to \infty} (a_n + b_n) = \lim_{n \to \infty} a_n + \lim_{n \to \infty} b_n$,  $\lim_{n \to \infty} (a_nb_n) = \lim_{n \to \infty} a_n \lim_{n \to \infty} b_n $  などが成り立つということ。英語では commute with と言ったりするが、日本語での良い表現を知らない。